【王位戦第5局】藤井聡太王位 対 伊藤匠二冠
― 角換わりから終盤の踏み込みまで徹底解説
2026年8月26日・27日の両日、徳島県徳島市「渭水苑」にて、第67期王位戦七番勝負第5局・藤井聡太王位と伊藤匠二冠の一戦が行われました。本局は角換わりから相腰掛け銀に進み、長い持久戦の末、終盤で藤井王位が鮮やかな踏み込みを見せて勝利を収めています。今回はこの一局を、序盤・中盤・終盤に分けて解説していきます。
対局情報
棋戦 第67期王位戦 七番勝負第5局(伊藤園お~いお茶杯)
対局日 2026年8月26日 9:00 ~ 8月27日 15:38
対局場所 徳島県徳島市「渭水苑」
先手 藤井聡太 王位
後手 伊藤匠 二冠
持ち時間 各8時間
消費時間 先手93分 / 後手340分
戦型 角換わりその他
結果 94手で先手・藤井王位の勝ち(投了)
序盤:角換わりからの駒組み(1手目~14手目)
序盤戦 角換わりの静かな出だし
初手▲2六歩・△8四歩から相居飛車の出だしとなり、▲2五歩△8五歩と両者が飛車先を伸ばして角換わりを志向する展開に進みました。▲7七角・△3四歩を経て、10手目△7七角成▲同銀で角交換が成立。

以下、△2二銀▲4八銀△3三銀と、両者ともに手厚く銀を繰り出す組み方を選び、角換わり特有の「駒がぶつからないまま駒組みが進む」序盤らしい静かな立ち上がりとなりました。

中盤:相腰掛け銀からの持久戦(15手目~60手目)
その後は▲4六歩・△6二銀、▲4七銀・△6三銀といった具合に、両者とも銀を中央高く進出させる相腰掛け銀の駒組みに進みます。玉型も▲6八玉→▲7九玉→▲8八玉、△6二玉→△7二玉と、互いに玉を囲い直しながら、じっくりと戦機をうかがう長い中盤戦となりました。

49手目▲2四歩から51手目▲同飛(24)にかけて一度飛車先の歩を交換し合う小競り合いがあり、53手目▲2九飛でいったん飛車を引き戻し、大きな駒損得のないまま局面は落ち着いています。

55手目▲7九飛、61手目▲2九飛(79)と飛車が横に大きく動いているのも本局の特徴で、藤井王位が右辺・左辺どちらからも仕掛けられるよう態勢を整えていたことがうかがえます。

終盤:63手目▲8六歩からの仕掛け
長い持久戦に区切りをつけたのが63手目▲8六歩でした。

△同歩の交換に対して65手目▲8四歩と垂らし、67手目▲7五歩△同歩と突き捨てを入れてから、69手目▲8三角打で角を打ち込みます。この角打ちが後手玉に直接にらみを利かせる一着で、△7一玉と早逃げを強いられました。

ここから藤井王位は71手目▲6五歩(66)、75手目▲6四歩、77手目▲7四角成と、歩を突き捨てながら角を馬に成り替えて後手陣に迫っていきます。

後手も72手目△8七歩成▲同金の交換や、78手目△5三金、82手目△6三金と金を活用して受けに回りますが、79手目▲6五歩打・81手目▲7五馬と、藤井王位は駒を渡しながらも着実に包囲網を狭めていきました。

85手目▲7六金から87手目▲6五金△同金▲同馬△同桂という一連の駒交換で、後手玉の守りの金・銀・桂を次々と外していきます。

86手目に△6一玉と一つ寄った後手玉でしたが、91手目▲6三銀打が決め手となりました。

後手は92手目△5二金打で懸命に受けに回りましたが、93手目▲7九飛(29)で寄せの網が完成し、94手目に投了となっています。

終盤は駒損を厭わず後手玉の守備駒を剥がし続けた藤井王位の踏み込みが際立つ内容でした。
まとめ
本局は角換わり相腰掛け銀から、両者がじっくりと玉を囲い直しながら態勢を整える長い中盤戦となり、63手目▲8六歩を機に藤井王位が一気に攻勢に転じた一局でした。とりわけ終盤、駒の損得よりも後手玉の守備駒を剥がすことを優先した踏み込みは、持久戦から一転して押し切る藤井王位らしい終盤術と言えるでしょう。この一局で藤井王位は王位防衛に大きく前進する結果となりました。
※本記事の指し手は将棋DB2掲載の棋譜データに基づいています。
